決断するひと(女性) は美しい 会場の瞳も輝く幸せなコンサート

 

「瞳かがやきコンサート」の司会をさせていただいた。
「還暦を機に、お世話になった方々に感謝を伝えたい」という
ある女性の想いをかたちにする、幸せなコンサート。

彼女は、神戸で眼科を開業する、高校の先輩。
今日まで35年間、出産前後を除いては休まず働き続けてきた人。
独立を決め、工事がスタートするまさにその日の朝に
襲ったのが阪神大震災。
そこから新たに立ち上がったという彼女の生き方は
私たちのあこがれでもある。

プロでもない私に司会の大役を任せてくれたので
直前まで何度もシナリオを書き直し、本番に臨んだ。

当日は、友情出演者もすばらしいお顔ぶれ。
日本初、 iPS細胞を使った網膜移植手術を成功させた医師のピアノ。
消化器内科の第一人者の医師のどこまでも伸びるテノール。
4人のママで、カルメンの挑むような誘惑を得意とするオペラ歌手
音楽と落語のコラボに挑戦する声楽家。

会場は、彼女が様々な形で関わってきた人で満席。
神戸市長とともに歌舞伎の次世代ホープである
片岡千太郎さんも駆けつける。

「賢くて人望があって音楽が上手で、きれいで。
恵まれた人がいるんやねえ…」

当日、会場のあちこちで、そんな声も聞かれた。
確かに、何もかもが素晴らしいコンサートだった。

でも、私がいちばん感動したのは、ちょっと違うところ。

彼女が2年前にふと思いついたことを
しっかりと決意し、そしてやり切ったこと。

2年前、医師会のミニコンサートで歌った彼女はこう言った。
「還暦には、芸文(会場名) でコンサートをしたいな〜」

普通は
「できたらいいな〜」「でも、無理無理」と
自分でフタをしてしまうことが多い。

彼女は違った。
とはいえ決してラクラク片手間でできる目標ではない。

でも、自分でしっかり「やる」と決めた。
「できるかな?」という不安を切り捨てた。
1年前には、難関?の会場予約も、抽選を勝ち抜いた。

そして、自分をそのレベルにちゃんと引き上げられて
当日のステージに誇り高く立っていた。
とてもとてもキレイだった。

当日のリハーサルと本番を聴いていたら
なぜか涙が出てきた。
司会をやるんだから、泣いている場合なんかじゃないのに…

だって2年前とは、まるで違うのだから。
声の伸びも、ツヤも、輝きも、スタミナも、
そして堂々と落ち着いて皆をリードする身のこなしも。

この2年間、仕事が忙しい中
私生活でもうれしいけれど忙しい行事がつづく中
どれほどハードな練習を積み重ねてこられたことか。
それが本当によくわかる舞台だった。

しかも、本当に楽しそうにイキイキと歌う。
だから聴いている人も幸せな気持ちになる。

2年前の彼女には、ソロコンサートは「夢」であっても
やるぞと決断した瞬間に「目標」となった。
そして迷わずあきらめず努力を続けた。

だから、この日の拍手と喝采は
自分にはできそうもないことをちゃんとやった
人に対する、共感と賞讃。
最前列では、涙ぐんでいる高齢の女性もいた。
やりたくてもできなかった時代の自らの人生と
重ね合わせていたのかもしれない。

彼女は、眼科の名医だ。
目が悪くなったら、もちろん的確な治療をしてくれる。

でも、彼女の生き方を見ていると
ためらっていた夢
あきらめかけていた夢
そして、まだ形になっていない夢
そんな夢に向かって、また一歩を踏み出す勇気をもらえる。
夢を追ううちに、自然に瞳が輝いてくる。

そんな不思議な力を持った谷眼科医院の先生を
神戸で今日もたくさんの患者さんが待っている。