サービスマナーは「お客様のためのもの」か
新型コロナウィルスの感染拡大で首都封鎖?!
という衝撃が走った翌日。
原稿を書いていたら、新聞の切り抜きが目に止まった。
なんと、なつかしい…
あのころは、こんなことが争点だったんだ…
なつかしいといっても、まだたった2ヶ月半しか経っていない。
その間に、私たちの常識は180度、いや、1,000%変わった。
この記事では、気管支の弱いスタッフがマスクをして接客したら
表情が見えにくい、声がきこえにくい、
体調が悪く見えるなどの理由で職場にマスクを禁止されて
納得がいかない、と疑問を投げかけていた。
いまや、接客時のマスクは常識となり、
マスクをしていないと怪訝な目で見られる…
では、この問題はこれで解決かといえば、そうじゃない。
「周囲の目に合わせる」という点が変わらなければ
働く人のしんどさは同じだからだ。
「お客様がどう感じるか」がマナーの基本だという。
「お客様の立場に立つ」とも言う。
でも、その「お客様」の感じ方がさまざまなのだ。
好きか嫌いか、常識か非常識か。
そして、許容範囲が狭いか広いか。
その得体の知れない総体である「お客様」に
合わせて「ああでもない、こうでもない」と
悩む時間は、なんだかもったいない。
ポイントは2つ。
今、目の前にいる人がどう思うのか。
これは、聞いてみるのが一番いい。
もうひとつ。
「うちはこうします。
なぜなら、働く人を大切にしたいから」と宣言すること。
「サービス」は、人間がやる仕事。
暑ければ汗をかき、汗臭くなる。
腰痛がつらい日も、身の危険を感じることもある。
「男がヘラヘラするな」と40年以上言われてきた人が
笑顔で仕事ができなくても、それがどうした?
洗練されたサービスマナーの訓練なんか受けていなくても
小さな社会であっても、一生懸命に生きている人。
人手不足の時代には、さまざまな人がサービス業の前線に出てくる。
外国人にばかり頼ってもいられない。
そして、私たちの暮らしは、そんな人たちに支えられている。
「おもてなし」にあぐらをかいた「お客様」の方こそ
いま目の前で自分のために働いてくれる人に感謝して
働く人がどう感じるかを思いやるゆとりを持ちたい、と私は思う。